越中通史の先駆けともいえる壮大な物語記録で、文化12年(1815)の完成。著者の野崎雅明の祖父伝助は、富山藩に御前物書役として仕え「喚起泉達録」を著した。その志を継いで著作を完成させたことが、『書経』のことばである「肯搆」と名付けた由来といわれる。雅明は学問熱心であり、享和2年(1802)から藩校広徳館の学正を勤めた。全15巻のうち初めの12巻は古代神話から書き起こし前田氏の治世に至り、終わりの3巻に紀行・地誌・年表を加える。本書は野崎家旧蔵書であることから雅明自筆になるもので、また、木版刷りの版下とするために丁寧に清書されている。富山日報社社長の横山四郎右衛門氏が入手されたが、昭和15年に旧富山市立図書館へ寄贈され、県立図書館へ移管された。当館には、前田文書本(前−120)、光定手写とある吉田氏蔵本(T204−28)の写本を所蔵している。また、明治25年(1892)に富山日報社から刊行され、昭和49年に富山県郷土史会が詳細に校注したKNB興産の刊本がある。