昭和27年に富山県立図書館が古書店から購入した武部文書(礪波郡三清村、加賀藩十村役)の中の1点。当時の整理方針によって一般書として整理され、その後堀隆美氏の指摘によりその重要性が再認識され、現在貴重書として保管されている。上・中巻の内題は「朝倉軍談巻上・下」で、下巻は「朝倉家之系図」および「朝倉家記巻の一前編」となっている。その成立については系図の末尾に「天正五年丁丑四月前越州亡臣真柄十郎左衛門尉直隆孫真柄夢宅斎隆久八十歳而拾遺而書記」、また家記の奥書には別筆で「此一冊越前朝倉家之旧臣小泉浄心家蔵」とあり、その来歴を知る手がかりともなる。内容としては現在広く流布している「朝倉始末記」より原本の様式を備えているとも言われているが、最大の特徴は家記に収録されている一連の文書である。これは越前の主権をめぐって守護斯波氏と朝倉氏との間に起こった訴訟に際して、朝倉氏から幕府に対して提出された証拠史料というべきものであり、これまでにこれに関する論文が多数発表されている。本書の解読書は『朝倉家録』として昭和57年富山県郷土史会から刊行されている。